NHKみんなのうた「笑顔」について
 2003年4月・5月にNHK総合で放送された「みんなのうた」の映像を制作しました。曲名は「笑顔」、岩崎宏美さんの深く澄んだ歌声が魅力の、みずみずしく温かな曲です。作詞作曲はインディーズの音楽家である永田雅紹さん。映像は「雲のむこう、約束の場所」作画監督の田澤潮さんと二人で制作しました。
 一人暮らしの女性がハムスターを飼い始めることから始まる物語です。
作品によせて(2003年当時のコメントの改稿です)
*
 「ハムスターは一日何キロも回し車を走るけど、立ち止まるたびに今日はどこまで来たんだろうと思いを馳せるの」という言葉を、友人から聞いたことがあります。みんなのうた「笑顔」の映像にハムスターを登場させたのは、その言葉を聞いたことがきっかけです。
 「笑顔」という曲は誰かと誰かの関係性をテーマにしているのだと思いますが、具体的にどういう人間同士の関係を歌っているのかということは明示されていません。だからこそ普遍に届くのだと思いますし、岩崎宏美さんの歌声がさらにそういった力を強めています。たとえば「笑顔」を10代の女性が歌ったのならばこれは恋愛の歌ということになるだろうし、子供が歌えば母性愛とか父性愛の歌になるでしょう。でも岩崎宏美さんが歌っていることで、「笑顔」はどのような世代・関係にも当てはめることのできるような非常に幅の広い曲になっています。楽曲と岩崎さんの声の力の相乗です。

 ではその曲に映像をつける時に、そこではどのような関係性を描こうと考えたときに頭に浮かんだのが冒頭の友人の言葉です。
 ──ハムスターは回し車を走るたびに、今日はどこまで来たのだろうと思いを馳せる。
 「それって人間の都合のいい願望をペットに押しつけているだけだよ」と言い切るのは簡単で、それは全くその通りなのでしょう。でもたぶん彼女の言葉はそんなことは承知した上で、それでもそう思わずにはいられないという切実さから発していたと思うのです。ハムスターの生は人間の手から離れては続きませんし、人間の生もペットにどうしようもなく支えられてしまうことがある。ペットの生に人間の願いを託した彼女の言葉は、大袈裟に言えば人の善性を示していたと僕は思います。自分もそのように思おうと、当時飼っていたハムスターを眺め考えたことを覚えています。
 そんなわけで、本来の楽曲のテーマの極々一部だけを切り取ったものになってしまうことは覚悟の上で、「笑顔」ではハムスターをモチーフに映像を作らせていただきました。もちろんそういうなんやかやは別として、単純に映像として「かわいいなー」と見続けてもらえるものも目指しています。なんといっても「みんなのうた」なのですし。
関連商品

コメント

  • ずっと昔、まだ子供だった頃・・・

    みんなのうたをチラッと見たとき、この「笑顔」という作品に出会いました。
    本当に少しだけしか見なかったので、曲とそれにあった絵のワンフレーズしか記憶になかったです。(すごくいい歌ですごくいい作画だったので強烈に記憶に残っていました)
    そんな時、新海さんの作品に触れファンになり、サイトで作品紹介の欄にこの作品を見つけたとき、鳥肌がたち10年以上の思いが吹っ切れて涙が出ました。
    それくらいこの作品は印象深いです。

    この作品を含め、色々な作品が人々の心や記憶に残っている事がとてもすごいと思い、本当に感激し感謝しています。

    これからも頑張ってください。

    ほんと期待していますが、プレッシャーは感じないでくださいね笑

    2013年1月20日 6:08 PM | ファン

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

コメントフィード

TrackBack URL :