kotonoha_music 新作アニメーション「言の葉の庭」の公式サイトと予告篇が、明日(2/21午前中)公開になります。それに先立ち、このサイトを見てくれているような僕の過去作をある程度知ってくださっている方々に、ひとつお伝えしておきたいことがありこのエントリーを書いています。
 実は「言の葉の庭」のBGMは、お馴染みの天門さん作曲ではありません。柏大輔さんにご担当いただいています。「天門曲あっての新海作品ではないのか」と思われる方もたくさんいらっしゃると思いますので(僕もわりとそう思います)、ここに至る経緯をお話ししておきたいと思うのです。
 きっかけは2007年の夏に柏さんからいただいたメールでした。「秒速5センチメートル」を観た、大げさではなく人生においてこの作品に出会えて本当に良かった、という文面に続けて、「私事で大変恐縮だけれど自分は音楽を作っているのでアルバムを聴いていただけないか」と書かれていました。こういうメールは時々いただきます。そのたびに嬉しいとは思うけれど、作品への感想に対しては僕はある程度麻痺してしまっているので(あまり一喜一憂していては仕事にならないから)、とりあえずスタジオにアルバムを送っていただき、仕事をしながら何度か聴きつつ、しかし他の処理すべき様々な日常業務の中で徐々に忘れていきました。当時僕は小説版「秒速5センチメートル」を連載しつついくつかの短編映像制作、それに翌年に決まっていた渡欧、それに伴う住居の引き払い準備などにばたばたと追われていたのです。でもまあ、誰のどんな作品であれ日常に埋もれていくのは宿命です。もちろん僕の作品も同様で、作品が誰かの生活にどんなふうに紛れ込み忘れられていくのだろうかと想像すること自体が喜びであったりもします。
 さてそれから4年が経ち、2011年の夏に再び柏さんから新しいアルバムが届きました。その夏は僕にとっては「星を追う子ども」の海外プロモーションの時期で、韓国・香港・アメリカなどへの出張の日々の中でやはりアルバムの存在は埋もれていきました。
 それからさらに1年後の2012年初夏。雨の日の物語を作ろうと思い立ち、脚本を書き会社の了承を取り付け、液晶タブレットにかがみ込み絵コンテを描き始めていた頃でした。雨の話だからBGMも雨の音のようにぱらぱらと降りそそぐようなものが欲しい──かもしれない。最初に楽曲に求めたイメージはその程度で、絵コンテを描きながらiTunesのラジオチャンネルをいくつか試し、自分のプレイリストを上から順番に再生し、気づいたら繰り返し再生していたのが、今までいただいてきた柏さんの楽曲群でした。ピアノの一音が雨の一粒のように波紋を広げて感情に触れる、そんな曲の連なり。霧雨から雷雨までまるで空模様の変化が凝縮されているような曲たち。5年前、あるいは1年前には見えなかった情景が、それらの曲の中にはくっきりとありました。そして最終的には柏さんの曲を随所に使う形で、「言の葉の庭」のビデオコンテをレンダリングしたのです。
 もう5年も前のことになりますがご記憶にございますでしょうか──という書き出しで柏さんにメールを送り、「言の葉の庭」の楽曲制作をご了承いただいたのはこのような経緯です。礼を失した僕の依頼にもかかわらず、その後の柏さんとの作品制作はとても楽しい体験でした。
 予告篇においても、短くはありますが「言の葉の庭」のBGMの魅力の一端はお聴きいただけると思います。もちろん天門さんの音楽もまた、次回作以降でお聴きいただけると思います。僕自身がなによりも天門さんの音楽のファンですから。
 ちなみに「言の葉の庭」のエンディングテーマについては、また別のアーティストの方が手がけてくださっています。こちらも素晴らしい曲が完成しましたのでどうかお楽しみに。
 僕が今、とても楽しみにしているのは、早く劇場で観客の皆さんに「言の葉の庭」を聴いて(観て)ほしいということ、それから、未だ実現していない柏さんと天門さんとの対面です。なかなかにタイプの違うお二人がどのような会話をするのか、横で酒でも飲みながら黙って眺めてみたいというのが、映画の仕上げの日々の中で疲弊しつつある今の僕の、来るべき春の楽しみです。

コメント

  • 明日が楽しみでしかたがありません!
    今夜は眠られるでしょうか(笑)

    2013年2月20日 7:13 PM | 小角卓矢

  • それは確かに驚いたものですね。
    今回はどのようなBGMが流れるのか、もう楽しみにしております。天門さんの音楽じゃなくて少し残念ですが、柏さんが作ってくださる曲も早く聴きたいと思います。どういう風な曲でしょうね。

    「次回作」という言葉が書いてあるのもすごく喜ぶことです。

    応援しております!!!

    2013年2月20日 7:41 PM | カロリン

  • すっごく楽しみだ~!
    リピート再生により、明日は仕事になりません。(笑)

    2013年2月20日 9:13 PM | 匿名

  • 「言の葉の庭」が天門さんの音楽ではないということ大変驚きました。
    ですが、天門さん以外の方、今回は柏さんの楽曲で新海監督の新作が見られるということで、今までの作品と違う新たな一面がとても楽しみです。
    とりあえず今は明日の公式サイトと予告公開を楽しみに待ってます!

    2013年2月20日 10:08 PM | のけ

  • 柏大輔さんは主にCM楽曲の方で活躍されている方なのですね。新海監督の作品とどのような世界観を生み出すのか、作品を待っている方としても期待と不安が入り混じった感覚です。楽しみにしています。

    2013年2月21日 12:31 AM | アポロ

  • 天門さんと柏さんの対面、いつか公式にも実現したらいいなあ…
    お二人が新海監督の作品にどういった思い入れやイメージを持っているのか、
    ファンの一人としてもお話に聞いてみたいです。

    2013年2月21日 2:26 AM | 匿名

  • 天門さんでは無いのは残念!
    ですが、柏さんの世界観を聞きたいし、天門さんにも新たな刺激になるかも?って勝手ながら思っています。
    いつか2人の名前が並んでいるのが楽しみになりましたね!

    2013年2月21日 2:36 AM | tante

  • 一ファンとして音楽が天門さんじゃないのは正直残念です。
    僕は新海さんの作品の魅力は美しい映像と美しい音楽の上にあるものだと思います。
    ef latter taleのopの最初に雨粒が落ちてくるシーンは、波紋のように広がっていくピアノの音と非常にマッチしていて、今でも何度も見返すお気に入りのシーンです。
    またあの雰囲気が味わえるのかという期待と、天門さんでなくてあの雰囲気に匹敵するものになるのだろうかという不安で複雑な気持ちです。
    主題歌も別のアーティストということですが、雲の向こう~のように監督と脚本を務める新海さんに作詞をしてほしかったです。
    作品の世界を構築する立場でしか表現できないこともあると思うので、新海さんの詩に乗せた歌をまた聞きたいです。
    なんだかんだ言って、やっぱり楽しみにしてきたので映画館には絶対見に行きます。
    これからも応援していきます!

    2013年2月21日 2:37 PM | よだか

  • 天門さんの音楽ではないのは残念ですが、天門さんの香りがするなぁというのが第一印象です。僕も音楽つくっているのですが、形になってない(笑)新海さんの作品に使われたらもうそれでたいしたものだと思いつつも、形にならない音楽を追い続けています。

    2013年2月21日 9:29 PM | ばさし

  • 情報公開のいろんなキャスティングを見て、ふと気になったBGM。
    お馴染みの天門さんではない理由はそこにあったのですね^^
    気づかぬうちに新海さんの耳に残っていた雨のピアノ曲。PVを見ただけでもこの空気感だ!と繰り返し見ています(笑)
    ED曲も秦さんの声があっていてカバー曲の「Rain」の言葉の意味も深く考えてしまいます。
    また秒速の時みたいな何度も聞くうちに心に染みる仕上がりだと、公開日が待ち遠しいです^^。
    いろんな組み合わせで生まれてくる新海さんの新しい世界を、これからも楽しみにまっています♪

    2013年2月22日 5:18 AM | 本田由希美

  • 新海さんの「秒速5センチメートル」
    kashiwa daisukeさんの「program music Ⅰ」
    の両方に感銘を受けた僕は、
    この度のタッグとても嬉しく思います。

    新海さんの作品に
    kashiwaさんの悲しく狂っていても波打つような音がどのように作用するのかって考えるだけでワクワクしてきます!!

    2013年2月25日 3:20 AM | チャー

  • 天門さんの音楽は素晴らしいと思います。
    ただ、新海さんの創造される作品=天門さんの音楽ということで
    あるのは少しもったいない気もします。
    いろんな方といろんなコラボをされて行かれる姿を
    私は見続けたいと思います。
    天門さんと柏さんのコラボもぜひ見てみたいです。
    素晴らしい才能をお持ちになった方が、刺激し合い創りだされる
    作品を見ることはわくわくドキドキします。
    今回の作品も楽しみにしております。

    2013年3月7日 1:47 AM | あら

  • 「ほしのこえ」の頃からずっと、新海さんの作品に癒されてきたものです。
    そんな私の中でも、「新海さん+天門さん」というコンビは当然のもののように頭の中で繋がっていたので、最初は驚きましたし、正直、少し残念に思いました。
    ただ、よくよく考えてみれば、おふたりは別に名前をつけてユニットを組んでいるわけでもないわけで(笑)。
    そのうち、新海さんにしても天門さんにしても、「様々な方と組み合わさっていく中で、今までにない新しい魅力をどんどん創り出し、広がっていこうという試みは、クリエイターとして当然のことである」と思えるようになりました。
    新作、本当に楽しみにしております。これまでにない新しい新海さんの色と、これまで通りの大好きな色、どちらにも早く逢いたいところです。

    PS>
    天門さんと柏さんの対面というのにも、非常に興味があります。
    音楽家という同じ立場の別人同士の新海談義、楽しみです。
    …ただし、懸念材料があるとすれば、柏さんが天門さんの絶え間なきガソリン給油の勢いについていけるかどうかがが、若干心配ではありますけれど(笑)。

    2013年5月15日 12:36 PM | SiON

  • 今日、映画館で見ていて音楽に違和感(いつもの新海作品と比べ)を感じてスタッフロールを見て納得。
    今回は天門さんじゃなかったんですね。

    新しい世界と定番の世界とまたこれからの作品の広がりに期待です。

    2013年6月9日 4:32 PM | ひょいひょい

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